日銀総裁人事
昨日の衆議院本会議で、日本銀行総裁などの人事案件の採決が行われましたが、それに先立ち各党が賛否の討論を行いました。同意人事案をめぐってはなんと60年ぶりの討論です。我が国の議会制が大きく前進した歴史的な場面に立ち会うことができました(結局、国会全体としては総裁人事に不同意ということになりました)。
さて、日本銀行は、言うまでもなく我が国の中央銀行であります。その機能は、日本銀行券(お札)の発行だけでなく、金融政策の実施、金融システムの安定の維持、物価の安定など多岐にわたります。日銀は、その性質上政府からの独立性と国民に対する透明性を維持しながら適切に政策を決定することが求められているのです。
今問題となっている日銀総裁は日本銀行のトップですが、その任命には国会の同意が必要です。政府が総裁を誰にするかを勝手に決めてしまうと、どうしても政府に好都合な人が選ばれ、独立性・透明性が阻害されるおそれがあります。そこで、国会の同意を要求することにより、民主的なチェックを働かせるということなのです。
今回、私たちが総裁の人事に反対した理由は、総裁候補の武藤氏が、金融の素人であるだけでなく、財務省そのものの人物であるため日銀の独立性が担保できないからです。これに対して政府与党側は、「民主党の党利党略だ」とか、「日本経済が大打撃を受ける」とか、「反対するなら対案を出せ」などと批判しているようです。
しかし、「党利党略」というのは、全くのいいがかりです。民主党は、ここにきて急に武藤氏への反対を決めたわけではなく、すでに5年前、武藤氏が副総裁に就任するにあたっても、反対しているのです。要するにブレることなく、一貫した立場をとっているわけで、今ここでいきなり賛成にまわるほうが不自然というものです。
これまで長い間、日銀総裁の椅子は、財務省の天下り先となってきました。天下りには、官庁による天下り先の監視・規制がつきものであり、今回も認めてしまえば、日銀に対する財務省の干渉は強くなっていくはずです。独立性が特に高く求められる日銀だからこそ、財務省からの天下りを厳重に排除しなければならないのです。
そもそも同意人事は、国会の同意を得られる人を探してくる義務を政府が負う仕組みです。武藤氏では国会が同意しないことが容易に予想できた以上、政府は別の人を見つけてくるべきでした(任命権の無い国会に人事案を示せなどスジ違い)。政府は、総裁人事案を再提出するようですが、今度こそは良識に期待したいものです。
60年ぶりの国会討論でもわかるように、人事案件に関する国会の議論は確実に活性化・透明化してきています。多少の混乱はありますが、これも人事案件が民主化する過程の一つだと思っています。なにはともあれ、5年間クビを切れない人事です。意味もなく焦って、のちのち後悔することのないようにしなければと思います。